私と音楽

                              2023年5月 西部邦彦

 

小学生の時、ハーモニカ、竹笛などを買ってもらい、吹いたことがある。この頃は音楽を楽しむというよりは、学校の宿題のため止む無く楽器と遊んでいたような気がする。また、父のバイオリンに触れたこともあるが、弓の毛がぼろぼろで、ほとんど音は出なかった。高校三年生の受験勉強のさなか、兄が持っていたクラシックギターを初めて触る機会があった。たまたま、禁じられた遊びの楽譜が手元にあったので、いきなり弾いてみた。楽譜の読み方は学校で習っていたので、最初の数小節は直ぐに弾けるようになった。ところが途中のセーハが出てくると、急に難しくなる。特に兄から教わる機会も無かったので、当時はここで挫折したように記憶している。

首尾よく大学に入学。入学式の日、構内のあちこちでクラブ活動の勧誘があり、ビラ配りが行われていた。その中にギタークラブもあった。忘れもしないがM氏が目の前で禁じられた遊びや、月光を弾いてくれた。これを聞いた時、初めてギターを手にした受験勉強時代を思い出し、直ぐにギター部への入部を決めた。

 勉強もそれなりに頑張ったが、暇な時はいつもギターを弾いていた。いつの間にかギターが一番の趣味になっていた。クラブではポピュラーグループに所属、定期演奏会にも何回か出演した。しかし、個人的に指導を受ける機会はほとんど無く、諸先輩のすばらしいギターの音色を聞くたびに、もっと良い音の出るギターが欲しいとずっと思っていた。

 大学を卒業、63才で会社勤めを終えた後、一念発起、近くの音楽教室に通うこととした。月二回のギターレッスンは今も継続しており、多くのことを学んでいる。

たとえば、

〇楽譜は縦ではなく、横に見ること、

〇右手のアタック角度(弾き方)でいかようにでも良い音が出せること、

(必ずしもギターの良し悪しではないことを、レッスンで初めて実感)。

〇演奏中の消音技術も重要であること、などなど。

 また、教室主催の生徒音楽会(内容はピアノ、声楽、バイオリン他多種多様)への出演機会が毎年二回あり、おかげで人前で演奏する度胸が大分備わってきた。しかし、この年齢(76才)になると、新たな技術の習得は難しく、もっぱら今の実力を落とさず維持することに努めている。

 

新型コロナ蔓延予防のため、最近外出機会が減った。そこで友人と3人で毎週オンラインギターアンサンブルを楽しむようになり、もう2年半程続いている。これはヤマハの開発したsyncroomという無料ソフト、パソコンへの入出力用音響インタフェース、及びマイク、スピーカを用いて行うもの。お互いが遠隔地であっても複数人の同時演奏が可能な優れもの。通信による遅延時間は約50msec、人の耳にはほとんど違和感はない。二重奏、三重奏の合間に自信ある人はソロ演奏も行う。アンサンブルで最も重要なことは、

  〇自分の出す音(音色、音の継続、強弱、速度、タイミング、ブレス)に責任を持つ。

忘れがちな消音も重要。

  〇他の奏者の音をよく聞く(強弱、速度、タイミング)

     できるだけ他の奏者の意図をくみ取りながら・・・。

とは言っても、お互い顔が見えないので、かなり難しいと感じることが多い。録音して再生すると自分の欠点がよく判る。しかし、アンサンブルにはソロと違った楽しさ、奥深さがある。うまくハモった時には感動すら覚える。

 私の趣味は他にもあるが、音楽、特にギターとの関りは一生続くと思う。

 

先生との二重奏 発表会にて

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