インドの政治課題

2022年8月15日、インドはイギリスの支配から独立してから75年目を迎えました。モディ首相は、インドが世界経済においてより大きな役割を果たすことをビジョンとして掲げています。しかしインドでは何百万人ものインド人が、いまだに質の高い医療サービスを受けられないでいます。目玉となる政策を打ち出したにもかかわらず、インド国民を失望させてきました。

 インドは世界で最もCOVID-19による影響が大きかった国の1つです。予防接種、栄養プログラム、非伝染性疾患のスクリーニングなどのサービスが中断されたため、復旧計画が急がれています。他方で、インドのCOVID-19ワクチンプログラムは、革新的なデジタル技術と遠隔医療の発展とともに成功を収めました。2018年以降、12万以上の保健医療センターが開設され、さらに15万のセンターが年内に準備される予定です。しかし、それらの最大の課題は、医療従事者を確保することです。地域の診療所に十分な数の医師を確保するには時間がかかります。

インド国民の健康と発展にとって、男女の不平等は大きな障害となっています。女性の生存率は低く、社会の隅々まで男女差別が広がっています。栄養失調と貧血は許容できないほど高く、栄養補給プログラムにもかかわらず、ほとんど改善されていません。男性に比べ、女性は保健医療の利用が少なく、女性の労働力参加率は大幅に低下しています。核家族化が進み、社会的セーフティネットを持たない高齢の女性、特に未亡人や独身女性が非常に多くなっています。ジェンダー間の不平等を正すには、社会的、文化的、制度的な規範を大きく転換する必要があります。女性の主体性を高めるには、労働や雇用だけでなく、教育、保健、栄養、水、衛生などの部門を含めた多領域の取り組みが重要です。しかし、このようなギャップを認めようとしない政治環境では何も変わりません。

 インドは2023年に世界で最大人口を擁すると見込まれています。人口ボーナスにより若年人口が増加し、出生率も安定しつつあります。その結果、インドは潜在的利益を享受する機会がありますが、その機会を掴む期間は限られています。この恩恵を受けるためには、国民の健康と福祉に投資する必要があります。政府はすべての国民が健康で質の高い医療を受ける権利を守ること、健康に対する治療を主体とした取り組みから予防的な取り組みに移行すること。市民社会の役割を否定するのではなく、受け入れること、若者が経済と社会に完全に参画できるよう、投資すること、社会のセーフティネットは、それを必要な人のために存在することを保証すること、健康の社会的、政治的、商業的、文化的な決定要因に取り組むこと、です。性別、カースト、階級、宗教、地域に関係なく、その潜在能力を最大限に発揮できない限り、インドが真の意味でグローバルの大国になるという願望は幻に終わるということを認識しなければなりません。

(注)人口ボーナスについて:人口ボーナス - Wikipedia

原文記事:India at 75 years: progress, challenges, and opportunities - The Lancet

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