交通事故
交通事故によって年間1350万人が死亡し、5,000万人が負傷者・障害者になると推定されています。それには歩行者、自転車、オートバイの利用者も含まれます。また、5~29才の子ども、若者世代における世界の死因の第1位となっているのです。持続可能な開発目標(SDGs)の目標3.6は、2030年までに 交通事故死傷害を50%削減することです。また、SDGs目標11.2 はすべての人が利用できる安全で持続可能な交通手段を掲げています。しかし、世界的な議論と行動の間には明らかな乖離があります。
The Lancet誌に掲載された3本の論文シリーズの論文1では、交通事故に取り組む必要性が政治的に受け入れられるようになった一方で、過去20年間、多くの国でほとんど変化がなく、世界はSDGs目標の達成にはほど遠いとされています。論文2は、スピード違反や飲酒運転の抑制、ヘルメットやシートベルト、チャイルドシートの使用など、すでに証明されている対策を導入すれば、致命的な交通事故の25~40%を回避できることを示しています。こうしたことは交低所得国や中所得国にとって特に意味があります。論文3は、救急医療と外傷に関する分野で死者数を減らせる政策を述べています。
交通事故の削減は保健医療界に限ったことではなく、警察や法執行機関、都市計画者、交通設計者、技術者にも関係します。ところがどの専門職も交通事故死傷の全体的責任を負わず、従ってどの専門職も十分な説明責任を負っていないのです。単一の要因で解決できるわけではなく、とりわけ交通形態が変化する中で、交通安全の効果は広く研究され、予測される必要があり、事故を最小限に抑えるための積極的な設計が最初から考慮される必要があります。
自家用車の保有を減らし、代わりに持続可能な公共交通機関や手段の共有、徒歩や自転車などの利用にインセンティブがあれば、多くの面で利益をもたらすでしょう。道路走行車両の数が減れば、負傷者数も減ることになります。 しかし、自動車と道路の使用量の急増は、大気汚染と騒音公害の増加、および都市部の拡大による生物多様性の喪失につながっています。道路交通への依存を減らすことは、劣悪な空気や座りっぱなしのライフスタイルに起因する病気:がん、呼吸器疾患、糖尿病、心血管疾患、うつ病なども減らすことができるでしょう。炭素排出量の少ない持続可能な交通手段への移行は、気候変動による悪影響を回避するのに役立つでしょう。
交通事故による傷害は、孤立した単独の問題として理解してはなりません。医療制度、持続可能な都市開発、地域と世界のリーダーシップ、統治力、都市の未来はすべて、交通事故による不必要な負担を改善するための対策に関わる領域なのです。