ウイルス性肝炎
7月28日は「世界肝炎デー」です。B型肝炎とC型肝炎は、ウイルス性肝炎の2大疾病で、炎症や肝臓への障害、時にはがんを引き起こします。2019年、HIVにより70万人が死亡したのに対し、B型肝炎とC型肝炎を合わせた死亡者数は110万人でした。この10年で、ウイルス性肝炎の治療は大きく変わりました。C型慢性肝炎を治療できる抗ウイルス薬の開発と、垂直感染を防ぐための出生時B型肝炎ワクチンの開発は、治療の新しい段階を迎えました。しかし、それを政治的に活かすことができていません。
5月に発表されたWHOの新しい目標は、2030年までにB型肝炎とC型肝炎の新規感染者と死亡者を50万人まで減少させること、および5歳未満の子どものHBsAgを0~1%未満にすることで、ウイルス性肝炎の撲滅を目指すというものです。しかし進捗は思わしくありません。ウイルス性肝炎に対する進展の恩恵は偏っています。アフリカでは世界平均の3倍近くになっています。Gaviの執行委員会は、出生時B型肝炎ワクチン実施の資金提供を承認していましたが、コロナパンデミック発生のため保留となりました。現在、C型肝炎の単感染症に対する直接作用型抗ウイルス剤には、どの国際医療支援機関からも直接に資金は提供されていません。
東ヨーロッパのような地域では、ジェネリック医薬品を入手できず、治療に苦慮しています。2008年、エジプトでは、注射針を再利用して投薬する住血吸虫症治療の国家的実験が失敗し、約10人に1人がC型慢性肝炎に罹患していました。エジプトは2018年、C型肝炎撲滅のために世界銀行から5億3000万米ドルの融資を受けました。スティグマや差別は、ウイルス性肝炎の制圧を優先しない理由の一つかもしれません。薬物使用の人たちなど、社会の中心から疎外された人々の多くは、ウイルス性肝炎にかかるリスクが高くなっています。B型慢性肝炎のほとんどは、出生時または出生後に感染しますが、このほとんどは出生時のワクチン接種で防ぐことができます。C型肝炎の治療も、費用対効果が高いだけでなく、総費用を節約できます。現実的な課題も残っています。診断が大きな問題です。B型慢性肝炎患者の10%、C型慢性肝炎患者のわずか21%しか自分の診断結果を知りません。検査と治療の啓発活動とともに、診療の場での検査法と自己診断法の開発が切実に求められています。
B型肝炎の機能的/身体的な治療法は、大いに必要です。HIVとウイルス性肝炎は、類似点があるにもかかわらず、肝炎は市民社会からの支援は得られていません。2030年のターゲットは大きな課題ですが、手の届くところにあります。
原文記事:Viral hepatitis elimination: a challenge, but within reach - The Lancet
関連リンク:B型肝炎 | 公益社団法人 日本WHO協会 (japan-who.or.jp) C型肝炎 | 公益社団法人 日本WHO協会 (japan-who.or.jp)