世界のがん医療:落胆の話を乗り越えて
世界のがん医療の状況を見るに、つい落胆してしまいがちです。2月4日は世界がんデーです。「がん医療の格差をなくそう」と改めて呼びかけられています。しかし、がんのケアと対策における世界的な不公平は根深いものです。例えば、小児がんの場合の生存率は、高所得国では80%以上であるのに対し、低所得国では20%です。放射線治療、高度な手術、革新的な治療法などの質の高いがん医療を実現するには、インフラ、労働力、教育、トレーニングなど膨大な開発が必要であり、その費用は目がくらむようなものになるでしょうしかし、現実的に可能なステップもあります。
第一に、グローバルヘルスにおける考え方の変化です。がんを含む非感染性疾患(NCDs)による早期死亡を削減することは、「持続可能な開発目標」に謳われています。しかし、NCDは世界の保健医療界から軽視されています。がんが死因の上位を占めるようになっても、ゲイツ財団や世界基金では、依然として感染症や子どもの健康問題が中心となっています。2021年、保健分野の開発援助は、HIV/AIDSが90億米ドルを超えたのに対し、NCDはわずか10億米ドル強に過ぎません。
このように手が十分に回らないことには、がん治療の費用と複雑さがグローバルヘルスにとって難題であるという考え方も一役買っていることでしょう。このような状況を続けることはできません。もしHIV患者団体が現状に甘んじていたら、抗レトロビラルの大規模な展開は生じなかったでしょう。グローバルな腫瘍学の課題には、より大きな注意と投資が必要であり、決して少なくしてはなりません。効果的で持続可能ながん対策プログラムは、各国の行動を通じてのみもたらされるものなのです。がんの40%は予防可能であり、さらに3分の1は早期発見と治療によって治癒することができます。とりわけタバコ、アルコール、ジャンクフードに大きく拠っているがんの疾病負担を増加させる商業的な健康決定要因に取り組むため、十分な課税と規制が不可欠です。
健康増進と教育は、病気を予防し、病気の早期発見を助ける意識を高めることができます。トップダウンの取り組みよりも、地域共同社会が主導する全体的なアプローチの方がはるかに優れています。各国はがん対策に関する国家計画を作成するよう世界保健機関から奨励されています。しかし、現在150カ国以上がそのような計画を持っていますが、世界の10%の国はタバコの抑制のための戦略がありませんでした。40%はアルコール消費を抑制する戦略がありませんでした。33%は、がん予防のためのHPVワクチン接種について言及していませんでした。
公平性は往々にして軽視され、多くは実行、統治、主体性の詳細が全くありません。最初のステップは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに対する政治的公約でなければなりません。しかし、第二のステップは、がんの専門的な予防および治療サービスを設計することでなければなりません。やらねばならぬことは回避することはできないということなのです。政治的遺産とその評価は、がんという問題にどう応えるかにかかっています。
原文記事:Global cancer: overcoming the narrative of despondency - The Lancet