後期高齢者、サポカーに乗り換える
私の車歴と事故歴
この拙文は、40歳にして運転免許を取り、後期高齢者のラインを超えたころから、いつ免許を返納しようかと惑っているうちに、心変わりして遅まきながらサポートカー(サポカーS)に乗り換えることになった思案の顛末である。御年76歳と8カ月。ゴールド免許証保持者である(何の自慢にもなりませんが、一応…事故歴に関係するので)。本論に入る前に、私の車歴、事故歴、違反歴を見ておく。最初の車はトヨタの中古車であった。
2代目は日産のブルーバード(新車)であった。この車で起こした事故は、大阪は難波筋で右折禁止のところを右折した瞬間、側道を走って来た車に鼻先を蹴られ(衝突)た。パニックになったまま、難波筋の歩道を突っ切って自動車修理工場の壁に激突して大破した。事故は朝の9時頃であったが、歩道には偶然歩行者がおらず、激しく衝突した工場にはシャッターが開いていて、作業員が働いていたが、そこのところに突っ込まずに済んだこと、相手のドライバーも無傷であったことは重ね重ね、不幸中の幸いであった。激しく衝突したというのは、車からミッションの液体が歩道に漏れ広がったこと、工場の壁を保護してあった15~20センチほどの太さの鉄製のパイプ2本が折れ曲がったことからも分かる。鼻先を蹴られた瞬間は今も網膜に焼き付いているが、アクセルとブレーキを無意識に間違えて踏み込んだに違いない(激突が示している)。私はというと、安全ベルトのお陰で上半身を打ちつけた痛みで4~5日、家で唸っていたことで済んだ。
3代目は保険金で買い直した同じく日産のブルーバード(新車)であった。この車では目立った事故は起こさなかったが、淡路島に行ったときに狭い路地から大きな道路に入る瞬間に、目の前を大型バスが通り過ぎたヒヤリハットを経験した。左右の確認をしていなかったのである。あと1回、駐車違反があった。
4代目は今のダイハツムーブ(軽)の新車。12年以上乗っているが走行距離は3万キロに満たない。家族は家内との二人きりとなって、大きな車は不要になった。大体からして、私は大きな車へのあこがれは全くなく、日常生活の移動性の確保が第一であった。この車で車中泊やキャンプを結構楽しんでいる[1]。ルーフキャリーを別途取り付けて、キャンプ道具の積載量を増やしたが、車中泊は一人でもさすがに窮屈で、寝心地もよくない。この車では1回の前方不注意のヒヤリハット[2]、1回の一時停止違反の違反歴を経験した。
老化と劣化は同じ
人は老化し、ものは劣化するが、故障する頻度が多くなるという意味で言えば本質は同じではないかと思っている。それを示すデータを示そう。下の二つのグラフを比べてみよう。工学をかじったことのある人にはなじみの故障率曲線(バスタブ曲線)は、ドライバーの年代別死亡事故発生率にそっくりである。挙動や傾向がそっくり似ていることは二つの事象の間に本質的に共通する何かがあると考えてよい、と思っている。
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[1] コロナのために、行動パタンは大きく変わってしまった。キャンプに出掛けるのが億劫となったが、キャンプギアの確認と使い方を忘れないように、自宅のデッキでも年に数回おうちキャンプをする。災害時の備えも兼ねている。1回の最長は連続7日間である。
[2] ヒヤリハットの法則は正式にはハインリッヒの法則と呼ばれている:「ハインリッヒの法則」とは、労働災害の分野でよく知られている、事故の発生についての経験則。 1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており、さらにその背後には事故寸前だった300件の異常、いわゆるヒヤリハット(ヒヤリとしたりハッとしたりする危険な状態)が隠れているというもの。ヒヤリハット事例だと自認するより実ははるかに多くの自認されていないヒヤリハット事例があると考えるべきであろう。まずはヒヤリハットを生じる状況を低減することが事故防止の入り口となる。
故障発生率曲線とは、ある製品が使われ始めたときからスクラップになるまでの期間、歳月を経るにしたがって故障する率がどのように変化するかを示している。製品が使われ始めたときは故障する頻度が高いが、以後は低減して安定した状況になり、スクラップの時期が近づいてくると急激に上昇する、というものである[1]。
ここで、製品の故障発生を車による死亡事故発生に置き換えると、そっくりのパタンが得られるということはどういうことか。運転免許を取ったばかりのドライバーは事故を起こしやすい。運転の経験が少ないからである。運転の経験を積んでいくと事故は減る。ドライバーが25歳あたりから事故率は低いままま安定し70歳代に入るまではほぼ一定である。ところが70代に入ると急激に事故率は上昇し、85歳以上では安定期の5倍に達する。滑らかな曲線を想定すると、変曲点[2]は70歳~74歳であり、このあたりでヒトの機能の低下が顕著になってくることを伺わせる。75歳で後期高齢者として線引きすることは車の事故に関する限り、統計学的に妥当なものと納得する。このドライバーの年代別(死亡)事故発生率の曲線は、ドライバーの体力、注意力、判断力などがある時点(年代層)で急激に落ちることを見事に反映した曲線でもある。ヒトの機能が低下するにしたがって事故が多発するとの前提を置けば、高齢になるにつれ事故を起こす率は顕著に増加していくことは容易に想像がつく。それを示したのが下のグラフである。
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[1]横道にそれるが、工業製品等の保証期間が1年と短いのは、初期故障に対応したもので合理的である。つい3年、5年の長期保証を追加の費用で求めてしまいがちであるが、費用対効果をよく考えるとそれがよい選択であるかどうか、である。
[2] 変曲点とは例えば直線が曲がり始める付近と考えることができる。別のたとえは物事の性質が変わり始めるところである(ここでは、老化が現象として目に見え始めるところ)。
過去10年の推移を見ると、75歳未満、75~80歳、80歳以上の年齢区分で、事故率は年代層が上がるにつれて倍々ゲームで増加する傾向は一貫している。平成30年(2018年)の時点で、(免許人口10万人当たりの事故件数)75歳未満3.4、75歳~80歳8.2、80歳以上11.1である。「歳には勝てない」は名言である。
老化を実感した契機
私が75歳で高齢者の免許更新したときには、認知症の試験、視力、実技試験等一通り受けて特段の注意はなく、無事に免許更新となった。しかし動態視力は同年代と比べて倍以上よかったとは言え、若い年代と比べると半分以下であった。運転には通常の視力に加えて、視野と動態視力が一層重要であるということを試験会場で教わった。考えてみればそれは当たり前のことであるが、これまでの免許更新では静止視力だけが検査されていたから、動態視力を測定したことは己の老化を認識する機会であった。通常の視力はメガネで矯正できるが、動態視力はリハビリでも、メガネでも矯正できないという。
視野狭窄の程度も重要である。私の叔父は糖尿病のために緑内障から視野狭窄となり、原付バイクで何回か自損事故を起こしたのちに、バイクに乗ることをあきらめてしまった。叔父は視野狭窄のために側溝に落ちる危険を見過ごしていたのである。白内障は視野全体がかすみ、硝子体出血は全体のカスミの他、ごみ、虫が見える。緑内障、網膜色素変性、脳血管障害によって視野狭窄となるというから、視野障害は多様な原因による。糖尿病→緑内障→視野狭窄と単純な経路だけと思ってはいけない。興味深いことに緑内障患者の方が事故に巻き込まれる傾向が低いという研究がある。それは緑内障であることを自覚しているドライバーは、夜間運転、霧の中の運転、雨の日の運転を避けるという慎重な規範を持っていることによる。自分の弱点、欠点を自覚することが事故軽減の第一歩ということであろう。とは言え、緑内障の程度は事故の発生と有意に関係している。ある研究によれば、緑内障の初期、中期の患者群では事故経験者が~6.9%であるのに対して、後期の患者群では34.5%であった。視野狭窄による事故は障害される視野の部位に大いに関係している。大まかにいうと、下の視野が欠けている場合、左右からの飛び出しへの反応が遅れ、上の視野が欠けている場合は標識・信号を見落とす。いずれの場合も欠損部分が視野の中心部にかかる場合は運転をあきらめるべきレベルになるという。
視認性は安全性を決定づける
車を運転する上で、視認性が決定的に重要であることは誰しも異論がないと思われる。緑内障患者が運転に慎重なのは視力、視野の重大性を重々自覚しているからであろう。この視認性についてのサポートシステムの一つに「左右確認サポート機能」があるが、作動条件は限界が大きく、自車が発進・後退前に停止しているとき、又は微低速で前進・後退しているときであり、静止しているものは認識できないとある。私のヒヤリハット事例は、植え込みの草の背が高くなっている交差点を左折するとき、植え込みの背丈と同じかそれより少し低い子供が走ってきて止まることなく横断歩道に出現してきたことがある。いわば植え込みから急に飛び出してきた状況である。おそらくこのような場合には左右確認支援機能は作動しないと思われる。期待できるのは駐車場から出る時であろう。交差点は事故多発地点であることを痛感する。
またまた余談であるが、ついでにメガネの度数も測定し直そうとメガネ屋に行ったときに、聴力検査も受けてみることにした。すると聴力は補聴器を装具しなければならないほどではないが、境界線にあるという。特に弁別能力試験では20問中1問を誤答した。弁別能力とは簡単に言えば、恵那峡という音声が流れたとき、「えなきょう」と聞き取るか、「へなきょう」と聞き取るか、である。つまり言葉を音声だけで正しく聞き取れるか、という能力である。この能力が落ちると、音として聞こえても(聴力に問題なくとも)言葉として把握しそこなうので、コミュニケーションに支障をきたすと言われる。高齢者が何度も聞き返す大きな原因であり、高齢夫婦の深刻な問題に発展するかもしれない。弁別能力を維持するためには聴力が落ち始めたときから、補聴器を装着するべきと言われた。それは弁別する神経回路は一旦劣化すると補聴器で聴力をあげても回復しないそうで、神経が劣化する前に一定レベルの聴力を維持する必要があるとのことである。
サポカー機能を思案する
それやなんやで高齢者免許は更新できたが、今後の運転については改めて不安に思うようになった。その頃から自動運転のレベルが気になりだしたのである。しかし、マスコミやネット情報とは裏腹に自動運転の実用化はなかなか進展しないようであったし、買い替えするとしても、自動化のレベルが高ければ買い替え費用はいくらになるか想像がつかないので、年金生活者にはもう手の届かない夢かなと思ったりもした。しかし、情報に当たっていくうちにサポート装置がどうたらこうたら、という記事が目につきだした。最初は衝突防止(回避)、踏み間違い防止機能であった。踏み間違いが大きな社会の関心を引いた、上級国民と揶揄された90歳を超えるドライバーの事故が思案のきっかけであった。そのうちに車線逸脱警告や追従機能などが喧伝されるようになったが、自動運転レベルとの関係はよくわからなかったし、軽自動車のクラスには装備されていないだろうと思い込んでいた。その思い込みを見直してみようと思ったのは、二人の息子がそれぞれ古い車を乗り換えたからである。その時は、買い替えた車の安全支援システムがどのようなものかは全く聞かなかったが、それよりも75歳を過ぎていつまで車に乗るのか、という自問であった。家内はそのころ免許を返納することにしていたし、とはいえ奈良県の交通があまり良くない町では、車を完全に手放すには抵抗感があった。一方で私は軽自動車でキャンプや車中泊という非日常が楽しみであった。いずれ全国を軽自動車で踏破する夢を持っている。まだ夢をあきらめるのは早い!サポカーを検討してみよう。
サポカーと言われる車は大まかに2種、細かくは以下の4種類に分類される。
① サポカー:自動ブレーキを搭載した車(全てのドライバーに推奨)
② サポカーS(特に高齢者に推奨)
(1) ベーシック:低速自動ブレーキ(対車両)+ペダル踏み間違い時加速抑制装置を搭載
(2) ベーシック+:自動ブレーキ(対車両)+ペダル踏み間違い時加速抑制装置を搭載
(3) ワイド:自動ブレーキ(対歩行者)+ペダル踏み間違い時加速抑制装置+車線逸脱警報装置+先進ライトを搭載
高齢者事故原因とサポート機能
車を手放すか、乗り続けるかを考えるに、まずは高齢者の事故原因の実態はどうなっているか、それらの要因と安全支援システムとの関係を見てみることとした(下の棒グラフ)。
自動車の安全性の一番は、ぶつかる危険性が生じたとき、なにはともあれ止まることである。対人であれ、対物であれ、止まることは自分の側ができる究極の防止策である。上記の事故類型が示す事故は全てが衝突であると見ることができる。この究極の策を支援するシステムとして「衝突被害軽減ブレーキ」がある。これは前進だけでなく後進の場合にも作動するので、バック時に誤って人を曳くとか、駐車場の壁を突き破って下に転落するということも防ぐ。
ではぶつかる危険性はどういう操作時に生じるのか。シフトの入れ間違い、アクセル踏み間違いである。シフトチェンジ、アクセル/ブレーキは運転状態を変化させるときに行う。停止から発進、走行から停止、危険回避が主なものであろう。ほとんど無意識に行うシフトチェンジ、ブレーキ操作の結果がドライバーの予測を裏切れば、ドライバーはパニックに陥る。この二つの操作にもサポートシステムは、それぞれ不意の後退回避と急発進回避が機能する。
いずれにしても急ブレーキを必要とする以外、シフトチェンジ、ブレーキ操作は穏やかにすることを心がけよう。このように、事故類型の全ては衝突から生まれており、その中でシフト操作とブレーキ操作の過ち(あるいは失敗?)が主要な部分を占めている。
事故原因を人的要因から見た原因のカテゴリーから見てみよう。主なものはドライバーの操作不適と不注意(内在的:「漫然運転」と外在的:「わき見運転」の二つ)である。操作不適はステアリングの操作不適とブレーキとアクセルの踏み間違いが主なものである。ステアリングの操作不適は、ドライバーの身体的機能、判断力の低下によると思われる。操作不適に分類されるブレーキとアクセルの踏み間違い先の事故類型にも現れている。これらはおそらくとっさの時に生じる無意識の誤りと思われる。いずれも75歳以上の高齢者で顕著に高くなっている。
注意力低下には、安全不確認、漫然運転、わき見運転等がある。ドライバーの目の動きをカメラが認識し、わき見をしていると警告するサポートもある(たびたびの警告をうるさいと嫌がる人もいるようだが)。これまで事故を起こさなかったという慢心や、高齢になって注意力が持続しないということが挙げられると思われる。家から半径5キロ以内に帰ってきたときに、事故を起こしやすいと言われるのも慣れた地理感覚から来る油断であろう。昔、植木職人の若い衆が高いところから下りてきて、地上まであと少しというところまで来ると下にいた親方が「注意して降りろ」と声をかけたという逸話が残っている。あと少し、と思う心が油断や急かす心を生んで大けがをするという戒めである。
数年前に一時停止を怠って交通切符を切られた経験がある。これは標識をうっかり見過ごしたのである。サポートシステムには標識認識機能があり、最高速度、はみ出し通行止め、補助標識「終わり」、「一時停止」、「車両進入禁止」の5つの標識を認識し、ディスプレイに表示して注意喚起する。とは言えディスプレイに表示された注意喚起に気づかなければ役には立たないのであるが。
夜間やトンネルの中では視認性が落ち、速度を多少なりとも落とすのである。視認性が落ちる理由にはいろいろあるが、ドライバーの視力(動態視力を含む)はもちろんのことであるが、ビームの使い方も視認性に影響する。日本では夜間にハイビームをなるべく使わない習慣があるが、むしろハイビームを積極的に使う方がよいとされる。しかし一般道路で対向車が来るたびにビームの切り替えをするのは面倒なので、どうしてもロービームのままということになる。自動で切り替えをやってくれるので、負担軽減とともに視認性を安定させてくれるのではないかと期待させてくれる。
車線の逸脱は恐ろしい事故につながる。対向車線へのはみだしは最たるもの、正面衝突は致命的である。対向車線へのはみだしは経験ないが、一瞬の寝落ちに、走行車線から追い越し車線へと逸脱した瞬間に、追い越し車線を猛スピードで追いついてきた車に、右際をすれすれに追い抜かれたことがある。二泊三日の長距離ドライブの帰りで疲れていたのであろう。この時は高速でのヒヤリ事故であった。後ろから追い抜かれた瞬間に目が醒めたものの、そうでなければあと数秒でガードレールに突っ込んでいたかもしれない。以来高速道路を走ることが億劫になってしまった。サポート機能のうち、全車速追従機能は高速道路および自動車専用道路において、先行車との車間距離を適切に保ちながら、加速、減速、停止まで行ってくれるという代物がある。この機能に加えて、「車線をはみ出さない」サポートは、ドライバーにブザーではみだしの「注意喚起」を行う警報機能、「ハンドル操作を促す」ことによる抑制機能、ふらつきの警報機能が相まって高速での運転負担、不安を大きく軽減してくれると期待している。高速で一瞬寝落ちしたヒヤリハットはもうないであろうか。このように見てくると自動車の安全運転は実に多くの要素を総合的にコントロールしなければならないことが分かる。すべからく人間の機能の低下は適切な許容限界内にあらねばならない。おそらくその下限は70歳から75歳の時期に来るのであろう。私は既に後期高齢者である。サポートカーに乗り換える腹積もりを決めなければならない。
ここで先進技術の限界も考慮すべきであろう(事例脚注参照[1])。トヨタ自動車公表の調査結果(平成27年12月〜28年12 月)では、自動ブレーキ、ペダル踏み間違い時加速抑制装置の両方を備えた車の追突事故発生率は非搭載車に対し約9割低減した(重要なことは0にはなっていないということ)。一方、別のデータでは平成29年5月~30年12月に発生した人身事故のうち、サポカーS(ワイド)相当による事故発生率(登録台数10万台あたり)は、全体に比べて約42%減少している(これを大幅低減とするかは別のデータが必要である。例えば件数は同じでも、人身傷害の程度が軽くて済めば、当然死亡は少なくなるだろう。大きな進歩である)。これらは先進技術の効果である。他方で脚注の事例は重要なことを示している。つまり統計的データは個別事例を拾い損ねることが往々にしてあるということである。私たちは統計的データに従うと思いがちであるが、個々のケース、局面においては統計に従わない(該当しない、あるいは異常な、逸脱した)事例の当事者になり得るということを肝に銘じなければならない。サポートの機能は統計的に安定した結果(完全な結果ということではない)を示すようになって初めて実用化とされているのである。極端な条件は実用化の条件設定から省かれている。では極端ではない条件とは何か?まずは法令順守で運転する状況であろう。
グレードによって支援システムの機能レベルの違いはないと言われる(メーカー、車種による違いはあるかもしれない)。メーカーが同じであればレクサスであろうが軽自動車であろうが、個別のサポート機能の性能レベルは基本同じであるという。もし安全サポートの機能が値段で大きく違うなら、命に値段がつくようなものである。
乗り換え車種を決定
さて、乗り換えるサポカーを決めなければならない。第一選択は軽自動車であった。初めて中古車を購入した自動車修理工場の会長さんに相談して、各種のパンフレット見比べ、話を聞き、試乗してみた。試乗には家内も同行した(家内は当初車の乗り換えに余り関心がなかったに見えたが、ある時から俄然興味を示し始めた。どうもお金が絡むと女性は真剣になるものである)。その結果、当初の候補車にはなかったスズキの新型ソリオとすることに決めた。決め手は内装が家内のお眼鏡にかなうレベルであったことに加えて、座席を倒せば最もフラットに近い平面ができる仕様が車中泊に良いのでは、という家内の一言であった(去年の夏、家内は京丹後と奥琵琶湖のキャンプの時、車中泊をして懲りたのだ)。会長さんに聞くと、我々の年配者が乗り換えるときは大きい車から小さい車に乗り換える人が多いということであった。ダイハツのムーブ(550cc)からスズキのソリオ(1.2L)へは逆行するようであるが、車中泊がこれまでより快適になるかも、という期待が勝ったのである。新車は10月20日までに納車できそうだという。乗り換えが果たして期待に適ったものとなるかどうか、半年、一年後の経験を書いてみたい。乞うご期待。
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[1] I氏が事故当時乗っていたとされるのは、トヨタの高級車ブランド「レクサス」の最上級セダン「LS」で、サポカーSに相当する。まさに先端技術の粋を集めた車に乗った同氏が東京都港区白金の都道で事故を起こした。車はガードパイプをなぎ倒して歩道を歩いていた自営業の男性(37)をはね、道路脇の店舗に突っ込んだ。男性は搬送先の病院で死亡が確認され、I氏も右足を骨折した。なぜ事故は起きたのか。識者が指摘するのは今の先進安全技術の限界だ。
自動車評論家の国沢光宏氏は「仮にペダル操作のミスでアクセルを踏み込んだとしても、障害物のない普通の道路を走っていたら、車のシステムは運転者が意識してアクセルを踏んでいると判定し、『運転者の意思』を尊重して自動ブレーキは作動しない」と指摘。さらに、「障害物を検知したとしても、自動ブレーキが利くための上限速度を超えて突っ込んでいけば止まることはできない」とも説明する。トヨタによると、自動ブレーキは、運転者が強くアクセルペダルやハンドルを操作した場合などは作動しない可能性がある。また、ペダル踏み間違い時加速抑制装置の作動には▽車速が約15キロ以下の時▽ハンドルを切っていない時(直進状態)-などの条件を満たすことが必要。障害物が細いポールなどの場合、システムが正常に作動しないこともあるという。警視庁高輪署によると、I氏は誤ってアクセルを踏み、車は停車場所から道路を約200メートル暴走。あわててハンドルを右に切り、反対側の歩道に突っ込んだ可能性がある。今回のケースでは、前方に大きな障害物がない道を暴走し、ハンドルを切っていることなどから、自動ブレーキが作動する条件を満たさなかったとも考えられる。
早稲田大理工学術院、森本章倫教授(交通計画)の話 「安全運転サポート車の普及が始まっているが、自動ブレーキの機能を搭載した車両に対する消費者の理解度はまだ低いと言わざるを得ない。一部には、すべての危険をカバーしてくれるかのような誤解も生じている。だが、技術に対する過信、慢心は事故を引き起こしかねない。事故抑止には、制限速度を守るなど安全運転を行うことが大前提だ。システムはあくまでも、法令を順守して走行する車を支援するものであるという意識を忘れてはいけない」