木工のおもちゃ展示会

日曜大工(その2:木工おもちゃ)      2022年10月 西部邦彦

 

前書き

私の趣味の一つは日曜大工である。本格的に日曜大工を始めて、もう50年近くになる。日曜大工との出会い、自宅フローリングの改造、私の大工工房などに関して、日曜大工(その1)で紹介した。木には、プラスティックには無い、木のぬくもりが感じられ、毎日のように木工作業を行っている。第2弾として、最近はまっている「木工おもちゃ」に関して紹介する。

 1.木工おもちゃにはまったきっかけ

 現在の自宅に移り住んで、約30年になる。自宅で用いる椅子、踏み台、棚などは一通り作り終えた。加入している日曜大工同好会主催の展示即売会で、木工パズル(写真:絵合わせパズル)を出品した(価格は材料費のみ)。これは、7×5=35個の正方形のブロック両面に写真を印刷して製作したもの。ブロックをばらばらにし、きれいに並べ直したら元の写真が再現される(作品例:ノイシュバンシュタイン城)。裏面には別の写真が印刷してある(両面楽しめる)。この作品は、親子連れに喜んで買っていただき、追加の注文も受けた。このことが、大きな刺激となり、好んで木工おもちゃを作るようになった。最近は、主にからくり木工おもちゃを製作している。いつも、小さい子供達が喜んで、大人と一緒に遊んでいる姿を思い浮かべながら作品作りをしている。

2.作品例

作品を幾つか紹介しよう(最後に動画があります)。

1) 回る地球儀

ころがすと、象のお腹で地球儀が回る。地球儀はなぜ落ちないか、どうやって入れたか、考えてみて・・・。車輪は購入品だが、地球儀は木工手作り。地球儀の仕上がり球精度が悪いと、うまく回りません(動画:回る地球儀)。

2)ビー玉ころころⅠ

ハンドルを回すと、ビー玉が連続して上部の穴から現れ、パチンコ球のごとく傾斜面をころがり落ちる。この時、左右に振り分けられると同時に、小動物の絵が交互に現れる。最後は奥の穴に吸い込まれる。傾斜面の横のカバーの中を見ると、複数の階段状柱を配置している。ハンドルの回転により、複数の偏芯カムが回転し、階段状の柱各々が交互に上下運動を繰り返すしかけとなっている。そのため、吸い込まれたビー玉は、階段状柱の上部を転がりながら、上方向に上っていく。最上部まで達することにより、循環するしかけとなっている(動画:ビー玉ころころⅠ)。

 3) ビー玉ころころⅡ

これは新型のビー玉ころころ。ハンドルを回すと、ビー玉が連続して上部の穴から現れ、パチンコ球のごとく傾斜面を転がり落ちる。この時、左右に振り分けられ、どちらかの羽根を回転させる。さらに、下部中央カップの中で回転しながら奥の穴に吸い込まれる。カップの中の動きが実に面白い。落下したビー玉は、裏に仕込んでいる羽根の間に保持され、(ハンドルの回転により)最上部まで達し、循環するしかけとなっている(動画:ビー玉ころころⅡ)。

4) 小象

ころがすと、鼻、尻尾を振りながら、耳を大きくパタパタする動きをする。駆動部の詳細は割愛するが、車軸に設けた偏芯カムを原動力にしている。前後いずれの方向にころがしても、鼻、尻尾と駆動部とが引っかかることがないよう工夫している(動画:小象)。

5) 子猿

ころがすと、足で車輪をこぎながら、尻尾と、あごが上下(下がった時、白い歯がむき出し)、両手でシンバル(いちごジャムのふた)をたたく。駆動部は、やはり偏芯カムを利用。動作がかわいくて、思わず笑ってしまいます(動画:子猿)。

6) 手回しメリーゴーラン

今まで作ったおもちゃの中で、自分では最高の傑作品と考えている。ハンドルを回すと、6頭の馬が、舞台の上で旋回、(順番に)上下運動しながら、時々不規則に自転する。不規則な動きがミソであり、さながら、舞い踊っているがごとく。各馬は、台座上に乗っかっているだけなので、手で触り、持ち上げたり、回したりすることも可能(動画:手回しメリーゴーランド)。

3.木工歯車

前述のおもちゃの中で、ビー玉ころころⅡ、メリーゴーランドでは各種歯車を多用している。歯車の設計では、最初に、ハンドル回転で、各ユニットをどのように回転させるかを考える。その時、歯数は設計(CAD使用)の容易さを考慮し、360度の約数の中から選定する。例えば、6、8、12、18、40、45歯など。歯車はある程度加工精度が良く無いと、うまくかみ合わない。そこで、CADで設計、実寸で印刷した歯車を硬めの板に張り付け、ジグソーなどで、慎重に切り出す。次に、やすり掛けを行いながら、微調整する。この工程は各歯同士、全てで行うため、大変手間と時間がかかる。機械加工と違い、手加工なので、どうしても各歯に個性が残る。そこで、いつも同じ歯同士がかみ合うよう、お互いの歯に印を付しておき、組み立て時に考慮する。

4.木工おもちゃのこだわり・苦労

 小象の耳などの可動部には、金属製の蝶番は一切使用していない。丸棒を使用して、手作りしている。あくまで木工にこだわり、ねじ釘以外の金属は使用しない(子猿のシンバルは別)。作品はいずれも、小さい子供達が手に触れ、動かして楽しめるよう工夫している。すなわち、ハンドルを回したり、前後にころがして遊べるように。随所に小動物の絵を貼り付け、歯車などのしかけは、良く見えるよう開口部を設け、透明のプラスティックでカバーした。

いつも残材を利用するので、同じ作品でも板厚が毎回異なる。なので、その都度設計し直している。また、可動部が多いので、作品作りは難航、苦労、失敗の繰り返し。しかし、うまく動くようになった時の喜びはひとしおである。おもちゃは、小さい子供が触れるので、角部は全て丸く削っている。安全性を優先し、もし可動部が手に触れても、挟んだり、怪我などしないよう配慮している。

 後書き

新型コロナ蔓延のため、ここ数年は展示即売の機会が無い。完成した作品は、孫に送ったり、知り合いにもらっていただいたりしている。昨年からは、市内の社会福祉協議会ボランティアセンターの紹介を受け、地域の子育て支援センターに寄付している。先日見学に行ったら、親子で楽しんでいる姿を見た。少しでも地域に役立つ活動のできることを嬉しく思う。

 私のからくり木工おもちゃを見て、このような発想、アイディアはどこから来るのか?と良く質問される。特に答えは無いが、木工作業が好きなことが一番。また、風呂の中、布団の中で、もっと面白い作品、良い知恵、うまい解決策が無いかと、いつも意識を巡らせている。

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