毎日Sunday Carpenter

日曜大工(その1)                        2022年10月 西部邦彦

 

1.日曜大工との出会い

 私の趣味の一つは日曜大工である。その出会いは、結婚数年後に初めて持ち家を持った時に始まり、今に続いている。土地境界線のブロック積みを手始めに、車庫の床コンクリート張り、車庫屋根作りなどを次々に行った。この頃は貯えも少なかったので、妻の協力を得ながら、全て自分で実施することにした。作業は毎休日に実施(まさに日曜大工)、当時はまだ20代と若かったので、体力には自信があった。作業に必要な主な道工具として水準器、コテ、電気ドリル、鋸、ジグソー(電動鋸)、電気丸鋸、カンナなどを買い揃えた。鋸で木を切る経験は子供の頃からあった。しかし、本格的な大工作業は初めてだったので、建材屋でノウハウなど教えてもらいながらの作業であった。

写真01

 あれから現在に至るまで50年近くの歳月が経った。転勤族であったため、土地、建物は既に人手に渡っている。先日Googleマップ(写真:01車庫、2012年11月撮影)を開いてみると、当時のブロック、車庫がまだ健在なのには正直びっくりした。当時から、日曜大工の素質があったのかも。63歳で現役引退後は、毎日日曜大工を行っている。今使用している道工具の中で電気ドリルは3代目、ジグソーは2代目、丸鋸も2代目。日曜大工は今後も趣味と実用を兼ねて、体が動かなくなるまで続けようと思っている。

2.自宅の改造

 現在の自宅は木造で、築40年近くになる。そのため10年近く前に、廊下、リビング、ダイニング床の張り替えを一年以上かけて実施した。張り替えに当たっては、床の微妙な傾斜の修正、フローリング下へのコンパネ(12mm厚)の追加なども実施。丈夫なフローリングに生まれ変わった。コンパネを入れたので、床がかさ上げされ、敷居の段差がほとんどなくなった。将来、車椅子になったとしても段差は容易に乗り越えられる。また、冷蔵庫の下と、他に数か所、足元に換気用ガラリを設けた(冬場は外せるように工夫)。おかげで、夏場に窓を締め切っても床から冷風が入り、快適である(写真:02床換気用ガラリ)。

写真02

 リビングの掃き出し窓は幅約2.6m、高さ約2.1mあり、冬の隙間風にはずっと悩まされていた。そこで、ペアガラス入りのインナーサッシ(本体は購入)を取り付けることとした。インナーサッシは注文すれば手に入るが、窓枠の寸法をmm単位で正確に測り、メーカに事前連絡する必要がある。実際測ってみると柱の微妙な傾斜があったので、施工前に修正する必要があった。インナーサッシを届けていただいたトラック運転手から、こんな大きなサッシ運搬は初めて、どうやって取り付けるのか?と質問を受けた。事前の窓枠寸法測定精度と、メーカの仕上がり精度が共に高かったので、余り苦労することなく施工できた。あれから9年になるが、今もスムーズに開閉できる。断熱効果と防音効果を兼ねており、大変重宝している(写真:03リビング窓)。

写真03

 真夏に窓を開けて寝ることができるよう、玄関と各部屋の窓に自作の格子戸(かんぬきでロック)を取り付けた。暑い日はドア(窓)を開けっ放し、クーラを付けて寝たことは一度も無い(写真:04リビング敷居)。

写真04

それは良かったのだが、最近リビングの網戸が開閉できなくなった。調べて見ると、原因は(欄間下部の)鴨居の降下である。中央で約7mmも下がっていた。そこで、日曜大工の経験と、車用ジャッキを利用して、鴨居の降下対策を実施した。具体的には、ジャッキを用い、力づくで鴨居を持ち上げ、余り目立たないようにT字形の小柱で枠体に固定。これで、解決した(写真:05鴨居降下対策)。

写真05

3.工房:こ(木)だわり

 日曜大工同好会での活動は市内の施設で行うが、普段の作業は自宅車庫の奥で行っている。したがって、愛車は木ぼこりでいつも真っ白、車で出かける時はまず窓を拭く必要がある。作業場(工房)の名前を、「こ(木)だわり」と命名、看板も製作した。作業はいつもこの看板に安全祈願してから開始する(写真:06木だわり)。

写真06

 一般には余り使用しないと思われる工具(治具)を紹介しよう。

1)  フットスイッチ

 両手を使って、電動工具を使用する時に用いる。足で(白い)スイッチをON/OFFできる。スイッチは不要となった電気ストーブの部品を流用した(写真:07フットスイッチ)。

写真07

2)  簡易ボール盤

 日曜大工にかかせない、工具の一つにボール盤がある。正確(鉛直)に、またはある程度以上の大きな穴を開けるには必須の工具である。もちろん、市販されているが、それなりに高価で、保管場所が必要。そこで、これも手作りすることとした。ホームセンターで手に入れた(机の引き出しに使用する)スライドレール二本を、縦向きに装着、下向きに力を加えるアーム、電気ドリル(着脱可)などにより構成した(写真参照)。鉛直精度は十分とは言えないが、保管場所もわずかで済み、手軽なため、重宝する工具の一つになった(写真:08簡易ボール盤)。

写真08

3) 簡易旋盤

 旋盤と呼ぶにはおこがましいが、電気ドリルは、他にもこのような使い方があるという応用例として紹介する。写真は、木工おもちゃ(詳細は別項参照)で使用する車輪の角部をドレッサ(やすりの一種)で丸く削っているところ。ドリルをしっかり固定し、ワーク(削られる車輪)を回転させながら削る。ワークをどのようにしてドリルにチャックするかに少し知恵が必要(写真:09簡易旋盤)。

写真09

4) 日曜大工ノウハウ

 紹介する程のことではないかもしれないが、私のこだわりの一端を紹介する。

・作品完成後の残材は、廃棄しないで、できるだけ保管している。板物、大物、小物、長物、丸物などに分類して。これが結構重宝する。マス寿司の容器(折)、だんごの竹櫛も有効活用している(これらの材料調達、中身の消費は妻の仕事、私は残材活用担当)。

 ・鋸作業後の切り粉も、きれいなものは空き瓶に詰めて保管している。不要な小穴、

隙間の穴埋め、傷の補修時などに重宝している。

 ・他にもノウハウはいろいろある。丸い部品・小さい部品の固定・加工方法。四角でないもの、丸いものの正確な寸法の測り方。大・小穴のきれいな開け方。鋸で垂直に切る方法。角部のきれいな削り方など、詳細は割愛する。

後書き

「料理に失敗は無い」と言った料理研究家がいた。誤解を恐れずに言うと「日曜大工にも失敗は無い」と考えている。もし、穴の位置を間違えた場合、追加で大き目の穴を開け、丸棒でふさいだ後、再度開け直す。板や柱など、短めに切り間違えた場合、接着で継ぎ足し修正する。ただし、強度不足の場合は間に(丸棒の)芯材を入れることもある。すなわち、どんな失敗でも修正、回復が手軽にできる。これが木工作業の大きな利点である。どのように手直しすると良いかを考えるのも、楽しさの一つである。

 年齢を重ねるにしたがい、ちょっとした寸法間違いをよく起こす。また、物を探し回る、工具をつかみ損ねて落とす、作業速度が鈍くなって来た・・・と感じることが増えて来た。しかし、これは(赤瀬川氏の言う)「老人力が付いて来た」と、前向きに解釈するようにしている。いろいろと趣味の日曜大工に関する経験を述べてきたが、自慢話と聞こえたなら、お許しいただきたい。これから木工作業を行う場合の、何かの参考になれば幸いです。

 

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