3 年目のコロナ:   ロングCOVID 

3月11日は、世界保健機関WHOがCOVID-19をパンデミックと宣言してから3年目に入ります。世界では少なくとも6,500万人が、感染後に疲労、息切れ、認知機能障害など一般的ではあるが、多器官に消耗性の症状を顕すロングCOVIDに悩まされ、数ヶ月から数年にわたって生活能力を損なうと推測されています。患者の大半は数週間以内に回復しますが、ロングCOVIDは10~20%のケースで発生すると推測され、ほとんどのケースは軽度の急性疾患で発生します。ロングCOVIDを発症した人の10人に1人が仕事を止め、多大な経済的損失が発生すると推定されています。しかし、関心度は低く、研究資源の不足しています。

 その多面的で複雑な性質については、ある程度理解が進んでいます。ウイルスの持続性、感染によって引き起こされる自己免疫、潜伏ウイルスの再活性化、炎症によって引き起こされる器官損傷につながる慢性変化など、考えられる原因を考察し、ロングCOVID患者に見られる多彩な症状を説明できるかもしれません。ロングCOVIDの多彩な症状、症状の記録が自己申告であり、診断テストやコンセンサスの定義がないため、多くの患者さんが確定診断を受けるのに苦労しています。その結果、長引くCOVIDは心身症として簡単に片付けられてしまうことが多いのです。

 

世界的に見ても、ロングCOVIDは注目されておらず、人々に十分認知されていません。特に低所得国や中所得国では、ロングCOVIDに関するデータがありません。インド、中国、南アフリカなど、研究が行われたところでは、ロングCOVIDが発見されています。政府、NPO、市民社会が一体となった世界的な学際的研究が不可欠です。米国と欧州委員会が国際協力を促進する会議を開いたのは、2022年12月のことでした。2022年8月、アメリカは「ロングCOVIDに関する国家研究行動計画」を策定し、これを受けてアメリカ国立衛生研究所は「Researching COVID to Enhance Recovery(RECOVER)」プロジェクトに10億~150億ドルを割り当てることになりました。EUは、まだロングCOVIDに関する研究課題を定めておらず、Long COVID Europe(患者団体のネットワーク)は、EUの緊急研究資金として5億ユーロを要求しています。

 ロングCOVIDに対する特別な治療法がなく、患者の多くは複雑な症状を抱えており、身体的、認知的、社会的、そして就労に関する多面にわたる支援が必要です。プライマリケアは多くの国で苦境に立たされ、待ち行列は長くなり、医療制度は苦境に立たされています。プライマリケアにおけるロングCOVIDの臨床管理に関する教育や意識は依然として不十分で、ケアにおける不公平が継続しています。患者を支援し導く、頼るに値する社会的基盤は多くの国でまだありません。COVID-19のパンデミックの急性期には、政府、国際機関、製薬会社、市民社会から前例のない反応がありました。しかし、ロングCOVIDについては、同レベルの関心や資源を得てはいません。その結果、健康、社会、経済に広く被害が及んでいます。3年になろうとする今日、今まで以上に多くのことが必要とされているのです。

 原文記事:Long COVID: 3 years in - The Lancet

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