世界銀行:命運を決める時

世界銀行にとって、今後数ヶ月は極めて重要な時期となります。化石燃料が気候変動を引き起こしているかどうかについて、デビッド・マルパスが心証を欺く発言をしたため、彼は6月に総裁を退任することになりました。世銀は重要な時期に信頼できる支援と助言の源としての信頼性を失ないました。世界銀行は、第二次世界大戦後、戦争で荒廃した国々の復興を支援することを目的に設立されました。その後、貧困削減に焦点を当て、守備範囲は保健医療を含む開発の全セクターをカバーする幅広いものです。COVID-19によるパンデミックは、世銀創設以来最大規模の貧困ぶり返しのトリガーとなりました。2020年には7億1900万人が極度の貧困状態にあり、2019年に比べて11%増加しています。貧困削減を提唱し、持続可能な開発目標に取り組むために、全セクターを横断する世界規模の開発機関の必要性はかつてないほど強くなっています。

世界銀行は金融における一大機関です。低・中所得国の開発プロジェクトに対する最大の資金提供者であり、グローバルヘルスに対する2番目に大きな資金提供者です。2022年だけでも、1,040億ドルを投資しています。世界銀行の最貧国向け基金である国際開発協会は、過去10年間で、3億6千万人の子どもたちへの予防接種を含む8億8千万人への必須の保健施策に資金を提供しました。世界銀行は、資本だけでなく、アイデアの発信源でもあります。費用対効果、障害調整生存年数、疾病負担の推定値といった重要な概念を初めて提唱する役割を果たし、これらの概念は保健分野の進歩を測定するために広く利用されています。

しかし、オックスファムの報告書によれば、世界銀行はすべての人の健康を実現するための重要な機会を逃していたと結論付けています。16のプロジェクトでは、保健サービス提供に民間セクターを関与させる可能性が示されました。しかし自らの経済的利益を優先する可能性が高い営利目的の民間医療機関を関与させることのリスクが十分に証明されているにもかかわらず、透明性、規制、説明責任が欠如し、懸念されていました。このようなことを見れば、万人の健康を実現するために、世界銀行がどれだけ良いことができるのかという疑問が生じます。

世銀からの融資の多くは、厳しい条件付きであり、その結果、返済が滞りがちになり、高金利で国々を苦しめています。これまでとは違う働き方をするための具体的な提案もあります。バルバドスのミア・モットリー首相は、昨年の国連総会での演説で、世界銀行と国際通貨基金がこれらの問題に対処できるよう、大胆な改革が必要であると主張しました。世銀のリーダーシップの構造は、つまるところ新植民地主義なのです。いくつかの改革はあったものの、筆頭株主である米国は、理事会における最大の議決権を有しています。歴代の常任理事もすべてアメリカ人なのです。バイデン米国大統領は最近、マルパスの後任としてアジャイ・バンガを指名したと発表しました。インドで生まれ、現在はアメリカ国籍を持つバンガは、専門家としてのキャリアの大半を民間企業の資金調達に費やしてきました。彼は、真の公平性、反貧困、脱植民地化の課題克服を推進する資質を備えているでしょうか。次期総裁は、世界銀行の歴史において重要な、いや、もしかしたら存続の危機に瀕している今、世界銀行への信頼を回復する機会を得たのかもしれません。

原文記事:A decisive moment for The World Bank - The Lancet

Previous
Previous

3 年目のコロナ:   ロングCOVID 

Next
Next

ロシアのウクライナ侵攻:健康への攻撃