米国の中間選挙と健康の行方

11月8日に行われる中間選挙の投票では、経済と高いインフレが全米の有権者の関心事となるでしょう。選挙結果次第では、中絶、銃規制、処方箋償還、気候変動規制に関する、最高裁の最近の判決によって生じた米国人の健康に対する権利損失を軽減し、あるいは取り戻すチャンスが危うくなります。民主党は、中絶権を連邦レベルで成文化し、法案に署名し成立させるために、両院で過半数を占める必要があります。銃規制については、超党派による踏み込んだ安全な地域社会法案(Bipartisan Safer Communities Act)を拡大し、銃安全に関する一連の立法措置を議会に求めていくとしています。しかし、これらの計画は共和党が率いる上院によって破棄され、銃に対する規制がさらに緩和される可能性があります。

生殖医療、精神医療、中毒治療、高額医療保険など、基本的な医療ニーズは、拡大された医療保険法(オバマケア)の下、国民皆保険制度となればすべてカバーできるでしょう。しかし、民主党はそのような法案を可決するのに必要な多数派を有しておらず、共和党が両院を制した場合は確実に可決しないでしょう。

アメリカの断片化された公衆衛生インフラは、次のパンデミックに対する準備ができているとは到底言えません。選挙後に上院を支配する者が誰であれ、パンデミック対策を優先させる必要があり、そのためには強固で十分な資金を持つ公衆衛生機関が必要です。議会で共和党が勝利すれば、米国の保健医療公約は毎年承認されなければならないので、危険にさらされることになります。また、下院共和党のケビン・マッカーシー党首が最近、ウクライナ支援を議会で実現することは「難しい」と発言したことから、ウクライナへの支援も脅かされる可能性があります。

アメリカの有権者にとって、健康は重要な問題です。世論調査によると、生殖の権利、医療費、処方箋費用といった問題が今回の選挙の重要な動機付けとなっています。米国では平均寿命が2年連続で低下し、77歳から76.1歳になっています。この低下は、パンデミックによるところが大きいです。しかし、COVID-19は問題の全くないところでは害を生じません。公衆衛生のインフラがバラバラとなって弱体化しており、何百万人もの人々が良質な医療を受けられない状況、また不平等が根付いている状況に鑑みると、驚くべき害を及ぼしています。アメリカの有権者は、この問題にどう対処したいのでしょうか。11月8日、有権者はその答えを知ることになります。

原文記事:Midterm elections in the USA: a pivotal moment for health - The Lancet

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