健康と商業的要因

健康を考える力は、心身の健康や幸福感・充足感に不可欠です。しかし、多くの人々は健康を考えた選択をすることができていません。従来、健康を考える力とは、個人の能力に焦点を当てたものでした。しかし、このやり方は、私たちの選択を支配する社会的、構造的な力を考慮していません。健康に関する決定は家族的に行われますが、地域社会の健康は、個人ではコントロールできない社会的、環境的な要因によっています。健康を考える力は、WHO上海宣言(2016)で健康の重要な決定要因とされ、個人に責任を負わせるのではなく、共同社会の集団的実践として再認識されています。

 11月6日に発表された健康を考える力に関するWHOの報告書は、利用者と具体策を提供する人々の声をサービス設計に反映するよう求めています。また、学校、教会、スポーツ団体、職場などを巻き込んだ社会全体の取り組みであるべきとしています。この取り組みは正しいのですが、課題の表層しか見ていません。特に、健康を商業的に左右する要因の影響力についてです。民間部門は宣伝文句を作り、健康を考える力を損なう方法で商品を販売します。代表的な例は、タバコ、アルコール、ジャンクフードです。

 タバコ産業は健康への悪影響があるにも関わらず、積極的に誤った情報を提供してきたのです。メディアにも問題があります。偽の情報が拡散し、人々の認識力を遮断した状態に追い込みます。相反し、矛盾したアドバイスの渦中で、人々や家族、地域社会は、どの情報源を信用すればよいのでしょうか。最も重要なことは、政策立案者が社会を不健康にしているもの、とりわけ健康の商業的な決定要因を説明し、対応しないのであれば、それは失敗を繰り返すことになるでしょう。

 原文記事:Why is health literacy failing so many? - The Lancet

関連記事:持続可能な開発のための2030年アジェンダにおける健康の促進に関する上海宣言 | 公益社団法人 日本WHO協会 (japan-who.or.jp)

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