中国の高齢化:危機かチャンスか?
親や年長者、祖先を敬う「親孝行」は、中国に深く根付いている美徳です。しかし、急速な経済発展とともに、個人主義の高まりと家族の人数の減少が、中国の高齢者の社会的地位を低下させています。2040年には、60歳以上高齢者は4億200万人に増加し、人口の約28%を占めると予想されています。中国の出生率は、出生促進政策である二人っ子政策と三人っ子政策の導入にもかかわらず、過去40年間継続的に低下してきたのです。インドは間もなく中国を抜いて世界一の人口大国になろうとしますが、中国の人口は2017年から2100年にかけて48%減少すると予測されています。
北京大学・ランセット委員会の「中国における健康的な加齢への道」は、健康的に加齢をしていくことがいかに中国にとって大きなチャンスとなるかを楽観的に概説しています。そのためには、ケアの提供方法と提供場所を変える必要があります。中国の現在の高齢者世代の健康状態は複雑で、合併する疾患や複数の疾病が多く、農村部と都市部、男女間の健康格差と平行しています。これらの課題に対処するために、単に大病院の老年病専門医や看護師の数を増やすことを望むのは、非現実的であり実現不可能でもあります。高齢者のケアは、病院中心ではなく、主に共同社会と家族を基盤とすべきなのです。このような再構築には、大きな文化の転換が必要です。中国では医療が必要な場合、プライマリーケアを避けて直接病院へ行きます。
長期介護における大きなギャップも埋めなければなりません。2030年までに中国の高齢者がさらに1400万〜2000万人が長期介護を必要になると予測しています。したがって、地域社会に根差した学際的なプライマリーヘルスケアチームの開発が必須であり、モバイルヘルスやオンラインヘルスサービスも含めることが必要です。
変革の必要性は、医療制度にとどまりません。社会的・経済的不平等が蔓延し、中国の高齢者の健康を左右しています。すべての人に経済的安定を保証するために、中国は最貧困層の医療と教育を助成し、健康の社会的決定要因にライフコースを考慮した取り組みを採用し、社会経済的格差を縮小する必要があります。中国では労働者階級の女性は男性より10年早く定年を 迎えるため、年金額が大幅に低下し、男女間の不平等が大きくな っています。女性の定年を男性の定年まで引き上げれば、この格差は是正されるでしょう。
これは、中国社会の多くの領域にまたがる挑戦的な提言です。先月の中国共産党全国代表大会でも高齢化の重要性は認識されており、習近平主席は健康な中国を建設し、健康を優先させると発言しています。中国の人口動態を考えると、これらは賢明な優先事項です。その結果は、高齢者だけでなく、中国全体の健康にとっても良いものとなるはずです。
原文記事:Population ageing in China: crisis or opportunity? - The Lancet