独立から75周年スリランカ:健康上の成果を守る
スリランカは今年、英国からの独立75周年と、植民地時代のプランテーションで働かせるために南インドから連行されたマライヤハ・タミル人社会の建設200周年を迎えます。彼らの労働力がスリランカの紅茶産業の原動力となり、スリランカ経済に多大な収益をもたらしました。独立以来、スリランカは、イギリス帝国主義の遺産と民族主義的政治を旗印とする社会の歴史的政治的緊張から生じる紛争と混乱の泥沼にはまり込んできました。スリランカ国民は、シンハラ人が支配する(仏教徒が大半を占める)スリランカ政府と、(ヒンドゥー教徒が大半を占める)タミル・イーラム解放の虎という分離主義者の間で26年間続いた残虐な内戦(1983年〜2009年)からいまだに立ち直ることができていません。過去5年間だけでも、スリランカは2018年の憲法危機、2019年のイースター・サンデー爆弾テロ、COVID-19、そして2022年には以前から継続している深刻な経済危機に対するかってない大規模な反政府デモに直面してきました。スリランカは、こうした危機に直面しながらも、健康における目覚ましい成果を維持できるのでしょうか?
スリランカの保健分野での実績は、長い間国民の誇りでありました。貧困層に焦点を当てた国民皆保険の拡大は、1930年代にさかのぼります。1951年以来、スリランカは税金を財源として、外来医療の費用を賄える人々は民間部門のサービスに依存しているものの、初診時には無料の医療サービスを提供してきました。過去70〜80年の間、教育の無料化、医療、女性の権利尊重に焦点を当てた福祉政策によって、世界銀行がスリランカを低中所得国に分類し、現在の年間医療支出がGDPのわずか1.6%であるにもかかわらず、(地域の他国と比較して)比較的高い水準の社会・健康の発展を達成することができたのです。平均寿命は77歳で、現在も伸び続けています。スリランカは、妊産婦と子どもの生存、マラリア、フィラリア症、ポリオ、新生児破傷風などの感染症の制圧と予防において、大きな成果を上げてきました。
とはいえスリランカの保健分野の成功によって、誰もが等しく恩恵を受けているわけではありません。総体的な統計は、医療を受けられる恩恵や広範な健康上の成果の中にある地域格差を覆い隠しており、とりわけ貧困にあえぐプランテーション労働者における格差が顕著になっています。少数派であるマライヤハ・タミル族に対する市民権の否定、国家による組織的排除、経済的搾取の歴史が、これらの共同社会における妊産婦死亡率と子どもの栄養不良率が高くなる主な原因となっています。内戦の数年間は、紛争当事者間の称賛に値する協力、分権化された運営による疾病プログラムを一本化する指導力、利害関係者の関与により、内戦の当事者双方から市民に保健サービスを提供することができていましたが、紛争による被害を受けた地区では、乳幼児と妊産婦の死亡率に顕著な差が見られるなど、保健上の成果が悪化しました。障害を持つ元戦闘員や、LGBTQIA+の人々やセックスワーカー(どちらもスリランカでは犯罪者扱いされている)など社会の隅に追いやられた人々は、その状況やニーズにサービスが十分に対応できていないため、つらい経験や健康上の問題を抱えています。
スリランカの健康と健康の公平性に対する長期にわたる脅威と、それ以上に深刻で喫緊の脅威の両方が合体しようといています。急速に高齢化が進む中、スリランカの保健制度は、疾病負担の増大を示す非伝染性疾患、傷害、精神疾患などの複雑で長期的な医療の需要に対応しきれていません。国営医療サービスは徐々に弱体し、資金調達は十分でなく、(医薬品調達プロセスの完全性を含む)公衆衛生運営への懸念が高まり、民営化への傾斜は、最大多数のスリランカ人が医療を受けることができるかどうかという深刻な脅威となっています。
現在の経済危機は、救命のための医薬品、医療用品、保健サービスの不足を招いています。さらに、医療従事者が高所得国へ流出することが深く憂慮されています。昨年、スリランカが対外債務不履行に陥ったことを受け、債権国との間で債務再編計画の達成に向けた協議が続けられていますが、スリランカ政府と二国間および多国間の債権者は皆、人的資本がスリランカの復興と将来の鍵であり、国民の健康は妥協する余地のない公共財であることを肝に銘じなければなりません。とはいえ、現在の危機は好機かもしれないのです。憲法改正が検討される中、健康への権利とそれに伴う社会的・経済的権利を憲法に明記することは、すべての国民が保健サービスを受けられるようにし、重要な健康の決定要因に対策を講じ、独立以来の重要な成果に対するスリランカの公約を再確認するのに力となるでしょう。
原文記事:Sri Lanka at 75: safeguarding its health achievements - The Lancet