パンデミックと情報共有の教訓

本号では、The Lancet Digital Healthが「Translating data in a pandemic」と題するシリーズを発表しています。パンデミック時に迅速に実施される研究の堅牢性の基準を高め、将来の集団発生に備えたデータ共有システムを改善する必要性を強調しています。Lauren Gardnerらは、パンデミックモデルが集団感染発生への対応について十分な情報を提供しなかったこと、また政策立案者や社会への情報の周知が不十分であったために流行の予測に限界があったことを強調しています。また、COVID-19をモデル化した研究は、誤った情報に左右されやすく、悪用される可能性があることが分かりました。

米国における情報共有システムの全体的な問題点も浮き彫りにしています。査読前の論文の公表であろうと査読付き雑誌の出版であろうと、どちらも情報共有に必要なスピードや質を満たしていないのではないかと疑問を呈しています。Louis Dronらによるシリーズ論文は、COVID-19症例データの標準化が十分でないことについて論じています。データをどのようにコード化するかについての透明性の欠如と、リアルタイムでのデータ共有に限界がある現在の医療システムの限界について、説明しています。データ共有に必要なインフラへの投資は、パンデミックを経験した後では各国政府の優先事項でなければなりません。医療システム間のデータの一貫性を確保するため、Dipak Kotechaらは、CODE-EHRの基本となる標準化のフレームワークを開発しました。パンデミックの間、電子医療データの共有は、あらゆる医療専門分野でのヘルスケアに関する意思決定(例えば、RECOVERY Trial(COVID-19の治験))において重要な役割を果たしました。

複数の地域から迅速にデータを収集できるインフラへの投資は、サル痘の流行に対抗する治療法を発見しようとする取り組みに役立つと思われます。

原文記事原文記事:The importance of linkage: lessons from one pandemic to another - The Lancet Digital Health

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