今こそ睡眠の重要性に目覚めよう

何十年もの間、睡眠とその関連疾患は継子扱いされてきた分野でした。このように放置されてきた理由は、睡眠時無呼吸症候群からむずむず脚症候群まで、症状が本質的には異なるものが睡眠障害として一くくりにされているため、原因があまり解明されておらず、治療法が十分確立されていないからです。

しかし、状況は変わり始めています。概日リズムの遺伝的基盤に関する研究のおかげで、ヒトには分子時計、すなわち1日周期で転写、翻訳、分解される計時遺伝子と関連タンパク質のネットワークがあることが知られています。これらの遺伝子は双極性障害やうつ病と関連しています。ある睡眠障害はパーキンソン病などのマーカーであると分かってきています。また、携帯型モニター装置の開発により、家庭を含む実生活での睡眠を評価することが可能になりました。さらに、ナルコレプシーの病態生理の解明は、新しい不眠症治療薬の開発につながっています。Lancet誌とThe Lancet Neurology誌は、様々な睡眠障害を体系的に調査し、睡眠の人類学を見直した4つの論文シリーズを本日発表します。本シリーズは4つの重要なメッセージを伝えています。

 第一に、睡眠障害は十分に評価されていない公衆衛生上の問題です。成人のうち3人に1人が不眠症を経験しており、患者とそのパートナーの双方に大きな苦痛を与え、人々の健康や経済的満足や充実感に多大な影響を及ぼしています。

第二に、睡眠障害の患者は、効果的な治療法がなく、適切な治療を受けられていません。不眠症には、Z薬を用いた薬物療法が簡単に処方されます。認知行動療法に基づく非薬物療法が第一選択と考えられているものの、広く利用できないことが多いです。会話療法は、薬物依存発症のリスクを伴わないため、認知行動療法の重要な部分となるでしょう。

第三に、睡眠不足が高血圧、糖尿病、心臓病などの病状に慢性的に悪影響を及ぼしていることを、医師は認識する必要があります。全ての診察において、睡眠に関する質問は不可欠です。

最後に、睡眠不足と睡眠障害に罹患する人の割合は、今後増加する可能性が高いです。不眠症は現代生活と密接に関係しています。心理社会的ストレス要因、アルコール摂取、喫煙、運動不足は、睡眠障害と関係しています。

睡眠は、人生の3分の1の時間を占める活動でありながら、これまで注目されてきませんでした。本シリーズは、良質な睡眠の重要性と、睡眠障害の研究、評価、治療が現代医学において重要であるということを、すべての人に対して警鐘を鳴らすものです。

             

 原文記事:Waking up to the importance of sleep - The Lancet

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