グローバル資金の優先課題:   次のパンデミックに備え

 

9月19日から22日にかけて、世界エイズ・結核・マラリア対策基金は、SDG3「エイズ・結核・マラリアの終息と、弾力的で持続可能な保健システムの構築」に向けた資金調達のため、世界中のドナー国を招集します。COVID-19のパンデミックによって、保健システムはさらに脆弱になり、世界基金の疾病に対する重要な計画が頓挫しました。世界的な生活費高騰による危機はドナー側の予算を逼迫させています。世界基金は、今回180億米ドルが必要であるとしています。60億ドルは、保健システムの強化とパンデミックへの備えに使用される予定です。

 国際機関評価ネットワーク(MOPAN)は、世界基金の疾病別目標に向けた成果を評価しています。しかし、世界基金は、保健システムの強化を拡大する一方で、国レベルでの疾患毎の保健対応を個別に継続しています。世界基金の今後5年間の戦略では、危機対応ではなく、元のSDG3の目標に偏ったままです。ドナー国の政府は、目に見える成果をあげることで、納税者の支持を得ようとします。しかし、緊急事態は決して目に見えるものではありません。

 世界基金は、「ACTアクセラレータ」のようなCOVID-19緊急対応の枠組みから、いかに資金を移行させるかについて、重要な議論を行いました。運用レベルでは共同社会すべてが発言権を持つにもかかわらず、理事会のほとんどの議席はドナー国によって占められています。統治構造の民主化、すなわち被援助国に平等な意思決定権を与えることは、パンデミック対策における必要な優先事項です。

パンデミックへの備えと対応のための強固な基盤は、すべての事業体間の結束した協力関係を必要としています。しかし、グローバルな保健を取り巻く環境は、ますます複雑になっています。今月、世界銀行は、世界規模でパンデミックや健康安全保障の脅威に備え対応できるよう、金融仲介基金(FIF)を発足させました。確かなことは、縮小していく基金をめぐって、増え続ける関係機関の間で、協調性に欠ける競争が繰り広げられる可能性があるということです。

グローバルな保健システムについて、すべての関係者をまとめることができる唯一の権威ある機関は、国連事務総長でしょう。今こそアントニオ・グテーレス氏が、COVID-19後の世界における世界の保健を優先し、保健システムへ投資することで命を救うという最大の見返りを得られるようにする時です。

原文記事:The Global Fund: replenishment and future-proofing - The Lancet

ACTアクセラレータ:ACTとともに、COVID-19に終止符を打つ行動を(COVID-19関連記事・日本語訳) | 国連広報センター (unic.or.jp)

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