水と健康:大きな視点で考える
水は、私たちが生きていくための根源的なものです。しかし、水資源管理の失敗と過信によって、2030年までに「すべての人が水と衛生を利用でき、持続可能な管理を確保する」という持続可能な開発目標(SDG)6の達成には程遠くなっています。2015年には、70%の人々が安全に管理された飲料水を利用できていましたが、2020年でも74%までしか進んでいません。同期間に、安全に管理された衛生設備を利用できる人は、47%から54%にしか増えていません。国連は、2030年の目標を達成するためには、水、個人的衛生環境、公共的衛生設備(WASH)の整備を4倍に増やす必要があるとしていますが、気候変動が進む中、この見通しはますます難しくなっていくでしょう。
水の利用は、多くの地域ですでに緊急事態となっています。世界人口の4分の1は極めて高いレベルで緊迫した水資源の状況に直面しており、工業と農業で年間供給可能量の80%以上を使用しています。水不足は公平性の問題でもあります。低所得国だけでなく、高所得国でも最も所得の低い人々に影響を与えます。安全な水の利用には性別による違いがあり、安全な水を調達、維持する負担は主に女性にのしかかっています。栄養、貧困、教育、紛争の改善には、適切な水資源の経営なしには不可能です。パンデミック予防を含む適切な感染対策に必要な衛生管理は、清潔な水と衛生設備に依存しています。WHOの最近の報告書は、適切な衛生設備を利用できない10億人が、気候変動の結果、コレラ患者が急増するリスクにさらされていることに注目しています。
水と衛生設備の利用という世界的な課題は、グローバルな問題として十分に認識されていません。私たちが飲用、洗濯、洗浄する水は、相互に関連し、依存し合っている地球の水循環の一部です。人間の活動は、このシステム全体に悪影響を及ぼし、圧迫しています。人為的な地球温暖化は、蒸発と降水量を変化させます。人類は、海洋の酸性化、海面上昇、海洋生物多様性の破壊、洪水や干ばつなどの異常気象を引き起こしています。しかし、水資源の世界的な統治・管理は協調性や、しばしば実効性に欠け、保全基準を無視し、水不足への対処よりも貿易政策の成果を優先しています。最近合意された公海条約は、国際水域の30%を保全のための枠組みを確立するものであり、非常に大きな一歩です。
水の経済学に関する世界委員会は、水を世界の集合財として位置づけ、水循環の安定化、低・中所得国における水利用への投資、水資源を軽視する評価姿勢に終止符を打ち、その保全を求めています。また、7,000億米ドルの産業界への補助金が、いかにWASHの普及を害しているかを強調し、これらの補助金を水の保全と清潔な水の広範な利用を促進するために使用することを提案しています。
世界的な水資源管理の失敗は、地球を危険にさらし、その結果、私たち全員を危険に追いやります。この「世界水の日」を転機とする必要があります。最も重要なことは、水の健康、経済、環境、生態学的側面が深く絡み合っていることを直視しなければ、すべての人のための持続可能な利用が達成することはない、ということが広く認識されることにあります。